葬儀の受付という大役を任され、「失礼のない挨拶ができるだろうか」「どのような言葉をかければよいのか」と不安を感じている方は少なくありません。参列者として伺うのとは違い、遺族の代理として立つ受付は、その振る舞い一つで葬儀の印象を左右することもあります。
本記事では、葬儀業界の標準的なマナーに基づき、葬儀の受付でそのまま使える挨拶の例文や、受付担当者が知っておくべき立ち振る舞いを網羅的に解説します。地域差や宗教による違いにも配慮しているため、安心してご活用いただける内容となっています。
目次
1. 葬儀受付の挨拶で最も大切なこと
葬儀の受付における挨拶で最も重要なのは、「遺族の代理として、参列者に感謝と敬意を短く丁寧に伝えること」です。
受付は、参列者が会場に到着して最初に立ち寄る場所であり、「遺族の顔」としての役割を担います。難解な言葉や特別な敬語を完璧に使いこなすことよりも、以下の3点を意識することが大切です。
- 控えめな声のトーン:悲しみの場であることを考慮し、落ち着いたトーンで話します。
- 簡潔なやり取り:混雑を避け、スムーズに参列者を案内することもマナーの一つです。
- 「恐れ入ります」の活用:お悔やみの言葉をいただいた際など、万能に使える丁寧な表現です。
基本の挨拶は「お忙しい中、お越しいただきありがとうございます」という感謝の気持ちをベースに構成しましょう。
2. 葬儀受付の役割とは

葬儀の受付は、挨拶以外にも多くの実務をこなす必要があります。当日の流れを把握しておくことで、余裕を持って挨拶ができるようになります。一般的に、受付が担う主な役割は以下の通りです。
参列者の出迎えと挨拶
会場に到着された参列者に対し、遺族に代わってお礼の言葉を述べます。参列者が最初に出会う「受付」の印象は、葬儀全体の雰囲気にも影響します。
記帳の依頼と確認
芳名帳(ほうめいちょう)への記入をお願いします。これは、後日遺族が香典返しやお礼状を送る際の重要なデータとなります。住所や氏名が正確に記入されているか、さりげなく確認するのも大切な仕事です。ただし、北海道では基本的に、参列者自ら芳名帳に記入することはなく、受付係が参列者の氏名や香典額を記録します。
香典(こうでん)の受領と管理
参列者から差し出された香典をお預かりします。高額な現金を取り扱うため、紛失や取り違えがないよう、慎重かつ正確な対応が求められます。多くの場合、会計担当者と連携して管理します。
返礼品(会葬御礼品)の受け渡し
記帳や香典と引き換えに、お礼の品を渡します。引換券がある場合は、券と交換で渡す形式が一般的です。
会場・施設内の案内
式場の入り口、返礼品受け渡し所、クローク、お手洗いの場所など、参列者が迷わないよう案内を行います。大きな斎場では葬儀スタッフが配置されていることもありますが、受付で尋ねられるケースも多いため、事前に施設配置を確認しておくと安心です。
3. 受付担当者の挨拶|基本例文(通夜・告別式別)

受付での挨拶は、「参列への感謝」と「お悔やみの言葉に対する返答」をセットで考えます。通夜と告別式で大きく変わることはありませんが、状況に応じた使い分けを覚えておくことをおすすめします。
通夜・告別式共通の基本挨拶
参列者が受付の前に立たれたら、まず腰を折って一礼し、以下の言葉を述べます。
- 「本日はお忙しい中、ご足労いただきありがとうございます。」
- 「お足元の悪い中(雨天時など)、お越しいただき恐れ入ります。」
参列者から「この度はご愁傷様です」「お力落としのないように」などのお悔やみをいただいた際は、以下のように返します。
- 「恐れ入ります。」
- 「ご丁寧に痛み入ります。」
- 「ありがとうございます。」(※遺族の代理としてお礼を述べる形になります)
記帳をお願いする際の例文
挨拶に続き、記帳を促します。
- 「恐れ入りますが、こちらにご芳名とご住所のご記入をお願いいたします。」
会場へ案内する際の例文
記帳が済み、香典をお預かりした後の流れです。
- 「お預かりいたします。式場内へお進みください。」
- 「開式まであちらの控え室でお待ちください。」
- 「お手荷物や上着は、あちらのクロークでお預かりしております。」
※地域によっては、受付で返礼品を渡さず、お帰りの際にお渡しする場合もあります。その際は「お帰りの際にあちらの受付へお立ち寄りください」といった案内が必要になります。
4. 香典を受け取る際の言葉
香典を受け取る際は以下の手順と挨拶を意識しましょう。
香典を受け取る際の例文
参列者が香典袋を差し出したら、必ず両手で受け取り、軽く一礼して以下の言葉を添えます。
- 「お預かりいたします。」
- 「ご丁寧に、おそれいります。」
※「ありがとうございます」も間違いではありませんが、香典は「故人に供えるもの」を遺族が預かるという性質上、「お預かりします」という表現がより一般的で、葬儀の場に相応しい丁寧な印象を与えます。
供花(きょうか)や供物(くもつ)の申し出があった場合
受付で「供花を出したい」「お供え物を持ってきた」と言われることがあります。これらは配置場所や木札の表記確認が必要なため、独断で判断せず葬儀スタッフへ取り次ぎましょう。
- 「お志、ありがとうございます。担当者に確認してまいりますので、少々お待ちいただけますでしょうか。」
返礼品(会葬御礼)を渡す際の例文
香典を受け取った後、または記帳の後に、感謝のしるしとして返礼品を渡します。
- 「こちら、供養のしるしでございます。お納めください。」
- 「会葬のお礼でございます。恐れ入りますが、お持ち帰りください。」
5. 喪主から受付担当者への挨拶例

受付を依頼する側(喪主・親族)も、多忙な中で引き受けてくれた担当者に対し、礼を尽くすことが大切です。信頼関係を築くことで、受付業務もより円滑に進みます。
受付開始前の依頼挨拶
集合時間に合わせて集まってくれた担当者へ、簡潔に挨拶します。
- 「本日はお忙しい中、受付を引き受けてくださり本当にありがとうございます。不慣れなことでご苦労をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」
- 「何か困ったことがあれば、すぐに葬儀社のスタッフか、あちらにいる親族に声をかけてください。」
葬儀終了後のお礼の挨拶
すべての参列者の受付が終了し、片付けが終わったタイミングで伝えます。
- 「本日は最後まで受付を務めていただき、誠にありがとうございました。おかげさまで滞りなく葬儀を終えることができました。心より感謝申し上げます。」
※地域や慣習により、当日にお礼(「志」と書いた封筒や食事など)を渡す場合もあります。
6. 受付でやってはいけないNGマナー
受付は「家の代表」として見られるため、何気ない言動が遺族の評価に繋がってしまうことがあります。以下の点は一般的に避けるべきとされていますが、地域や親族間の関係性により許容範囲が異なる場合があるため、柔軟に対応してください。
言葉遣いのNG(忌み言葉など)
- 重ね言葉を避ける:「たびたび」「重ね重ね」「いよいよ」などの言葉は、不幸が重なることを連想させる(忌み言葉)として、葬儀の場では控えるのが一般的です。
- 私語を慎む:知り合いの参列者が来た際、つい近況報告などの世間話をしてしまいがちですが、大きな声で笑ったり話し込んだりするのは控えましょう。
- 死因を詳しく尋ねない:参列者から聞かれたとしても、「私共も詳しくは存じ上げず……」と受け流すのがマナーです。
態度のNG
- 座ったまま挨拶をする:椅子が用意されている場合でも、参列者が受付に来られたら必ず立ち上がり、姿勢を正して挨拶をするのが基本です。
- 香典の中身を目の前で確認する:参列者がいる前で香典袋を開けるのは非常に失礼にあたります。中身の確認や集計は、必ず参列者の列が途切れた際、あるいは別の控え室で行います。ただし、北海道ではその場で香典を開封して金額を確認し、領収証を発行することが通例となっています。
- スマートフォンの操作:待機中であっても、受付のデスクでスマホを触るのは不謹慎と捉えられる可能性があります。
服装・身だしなみ
- 受付係は喪服を着用するのが一般的です。光る素材や、革製品(殺生を連想させるもの)は避けましょう。
- ヘアスタイルも参列者同様のマナーとなります。長い髪は低い位置で一つにまとめましょう。
葬儀の服装について詳しくは以下の記事をご参照ください。
【関連記事】葬儀の喪服。礼服?スーツ?家族葬の服装マナー
7. 葬儀の受付挨拶についてよくある質問

葬儀の受付において、現場でよくある疑問を事実ベースでまとめました。
Q. 受付で「ありがとうございます」と言ってもいいのですか?
A. はい、問題ありません。
かつては「ありがとうございます」は慶事の言葉とされ、避ける傾向もありましたが、現代では「お忙しい中お越しいただいたことへの感謝」として、一般的に広く使われています。もし抵抗がある場合は「恐れ入ります」「ご丁寧に痛み入ります」という表現を使うと、より慎重で丁寧な印象になります。
Q. 参列者から「遺族の方はどこにいますか?」と聞かれたら?
A. 「現在は式場内(または控え室)におられます」と伝えて問題ありません。
開式直前や儀式の最中は、遺族も対応が難しいため、無理に取り次ぐ必要はありません。どうしても直接挨拶したいという方がおられる場合は、葬儀スタッフに相談して誘導してもらうのが確実です。
Q. 宗教によって挨拶を変える必要がありますか?
A. 一般的な感謝の挨拶(お越しいただきありがとうございます)は、どの宗教でも共通して使えます。
仏教では「この度はご愁傷様です」、神道では「御霊のご平安をお祈りしております」、キリスト教では「安らかな眠りをお祈りいたします」といった言葉が使われることがありますが、これらは主に参列者が使う言葉です。受付担当者は「恐れ入ります」といった言葉を使うのが最も無難で間違いがありません。
Q. 香典を辞退している葬儀での対応は?
A. 丁寧にお断りするのがマナーです。
「故人の遺志により、ご香典は辞退させていただきます。お気持ちだけありがたく頂戴いたします」とお伝えしましょう。受け取ることは、遺族の意向に反することになるため注意が必要です。
8. まとめ
葬儀の受付における挨拶は、「丁寧さ」と「簡潔さ」を心がけましょう。遺族に代わって参列者に感謝を伝え、スムーズに式場へご案内することを意識しましょう。
- 基本は「お越しいただきありがとうございます」「お預かりいたします」
- 遺族の代理としての謙虚な姿勢を保つ
- 困ったときは無理に判断せず、葬儀スタッフに頼る
受付の役割は責任が重いものですが、あまり難しく考えすぎる必要はありません。参列者の方々も、あなたが遺族のために尽力していることは理解しています。落ち着いて、一つひとつの動作を丁寧に行うことが、何よりの供養と礼儀になります。
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