葬儀の形も昔とは変わりつつあり、近年は家族葬のように小規模な葬儀を選ぶ人が増えました。ここ数年は新型コロナウイルスの影響も相まって、家族葬は葬儀を行う際に欠かせない選択肢の一つになっています。

“家族”という文字から「家族以外は参列できないのか?」という誤解もあるようですが、親族や友人などが参列するケースもあります。

これほど定着している家族葬ですが、いまだに「なぜ家族葬を?」と、親族から反対の声を受け、困惑されている方もいらっしゃるようです。

家族葬を行う際は「費用をおさえられる」などの安易な理由ではなく、具体的な理由を伝えることにより、親族に納得してもらいやすくなります。

【具体例】家族葬を選ぶ理由

  • 故人が生前から家族葬を希望していた
  • 身内だけでお別れしたい
  • 介護費用もかかっていたから、葬儀にかけられるお金がない

このように、「どうして家族葬を選んだか」という理由を明確にしておくことが大事です。

今回は、家族葬が選ばれている背景や、家族葬を行う際の注意点などをお伝えしていきます。

実際にあった、家族葬トラブル事例

喪服を着て涙ぐむ女性と慰める女性

まずは、筆者の知人が実際に体験した、家族葬にまつわるトラブル事例をご紹介します。

長年認知症を患っていた奥様を亡くされた知人男性のお話です。

認知症を発症してから亡くなるまで10数年、最後の2年ほどは老人施設で過ごされた奥様。

もともと友人付き合いは浅い奥様だったので、認知症を患ってからは人との交流がほぼありませんでした。

そのため、一般葬を選んでも参列者はいないと予想していました。

ご高齢の知人男性にとって葬儀費用の負担が大きいうえ、長年の介護疲れで精神的にも憔悴していたことから、小規模な葬儀を強く希望したそうです。

男性の兄弟とは深い交流があったため、葬儀参列者は知人男性とその兄弟、そしてご自身の子供達だけという、10人未満の家族葬をお選びになりました。

甥や姪とは疎遠だったため、葬儀に参列されると気を遣います。そこで「甥や姪たちは参列しないでほしい・香典も辞退したい」と人づてに伝えました。

男性の意向をくみ取って参列しない甥や姪もいましたが、数人が「親戚だから葬儀には出る」と誘い合い、香典を持って直接葬儀場にやってきて、勝手に参列したとのこと。

これには知人男性も驚きましたが、だからといって帰すわけにも行きません。十数年ぶりに会う甥や姪にも気を遣い、ゆっくり奥様を見送ることができなかったようです。

また、葬儀の後に食べる折り詰め弁当を、参列予定の家族の分だけ注文していたのですが、甥や姪を手ぶらで帰すわけにもいかず、自分達の分を帰りに持たせたとのことでした。

知人男性の「葬儀を辞退してほしい」という言葉の真意は、自分も疲れているから家族だけで小さく見送りたいという気持ちでしたが、甥や姪たちには「親族に遠慮してそう言っているのだ」と勘違いさせてしまったようでした。

このエピソードから、近しい家族だけが参列する家族葬を希望する場合は、「葬儀を辞退してほしい」という意向だけでなく、「どうして家族葬を行いたいのか」という理由をしっかりと伝えることの重要性がわかるのではないでしょうか。

家族葬が選ばれている社会的な理由とは

喪服を着て合掌する男性

家族葬は現在多くの方に選ばれている葬儀形式です。本項では家族葬が選ばれるようになった社会的な状況と理由をご紹介します。

コロナを機に小規模な葬儀が主流となった

この数年、コロナウイルスの流行により、マスクの着用やアルコール消毒を行うこと、人混みを避けることなどが増えました。

そして、コロナウイルスやそのほかの感染症が広まるリスクを軽減したいという意識が定着し、参列人数が増える一般的な葬儀よりも、身内だけの葬儀が主流となりつつあります。

平均寿命が伸び、故人も喪主も高齢化

近年では、仕事に趣味にと人生を謳歌し、年齢よりも若々しい人が増えています。昔と比べると平均寿命も伸び、人生100年時代ともいわれています。

寿命が延びるということは、亡くなる人が高齢になるだけでなく、喪主となる配偶者や子どもの年齢も上がります。

その影響で、仕事をしていた頃の関係者とのお付き合いがなくなっていたり、親族や友人との関係が希薄になったりしていて、参列人数が少なくなることが予想されます。

また、高齢の方が喪主を務める場合、大規模な葬儀が負担となることもあり、家族葬が好まれる傾向にあります。

喪主の負担を減らしたい

喪主の負担を減らすために家族葬を選ぶ人もいます。

昔は子供の数も多く、親が亡くなっても兄弟姉妹・親戚で協力し合って葬儀を行ったものです。

しかし現在は、子供がいない方や子供が少ない方も増えたため、大規模な葬儀を行うと、喪主・遺族の負担が大きくなってしまいます。

葬儀費用の支払いや参列者の対応といった、喪主や遺族にかかる負担をおさえられる可能性が高いことも、家族葬が選ばれる理由のひとつといえるでしょう。

葬儀への思いの変化

「葬儀」に対する思いが変わってきたことも、家族葬が増えた理由です。

一般葬は参列者が多く、それぞれの対応に忙しく気を遣います。故人とゆっくりお別れしたい方も、参列者が多ければその応対に追われてしまいます。

なかには、周囲に気を遣い過ぎて、しっかりお別れできずに後悔が残るケースもあります。

このような理由から、家族葬が選ばれやすい状況になっているといえるでしょう。

家族葬をするときは、自分なりの理由を明確に

祭壇に向かって手を合わせる女性

前項でご紹介した社会的な理由だけでなく、それぞれのご家庭の思いや事情によって家族葬を選ぶケースもあります。

多くの場合、葬儀の形式や内容については、故人となるご本人やご遺族の意向を反映して決定しますが、周囲に全く相談せずに家族葬を選ぶと、後から「どうして家族葬を選んだの」と不満気に言われてしまう可能性もあります。

これからもお付き合いが続く親族にも納得してもらえるよう、「家族葬を選ぶ自分たちなりの理由」を明確にして周囲に伝えることも大切です。

本項では、家族葬を選ぶご家庭の一般的な「事情」や「思い」についてご紹介します。

費用負担をおさえるための家族葬

親御さんの葬儀の場合、「自分が亡き後の葬儀用に」と遺してくれた預貯金を使うケースも多いでしょう。しかし、すべての葬儀がそうとは限りません。

また、子供のいない故人の葬儀は兄弟や甥・姪などが喪主となるケースが多くあります。疎遠となっているおじやおばの喪主になった場合などは、できるだけ費用をおさえたいものですよね。

故人に預貯金がほぼないケースは、喪主に大きな負担がかかりますので、親族との関係性によっては、正直に「費用負担をおさえるため」という事情を話してもいいでしょう。

規模が小さい家族葬は一般的な葬儀に比べて費用は少ないものの、読経など僧侶への支払いは必要です。

様々な事情によって、家族葬よりもさらに費用をおさえる必要がある場合は、宗教儀礼を行わない直葬なども選択肢の一つとして検討するとよいでしょう。

ゆっくりお別れしたい家族葬

家族だけでしっかりお別れしたいという思いから、家族葬を選ぶ方もいます。

一般葬では故人のために多くの人が集まってくれるため、「こんなにも慕われていたのだ」という感謝の気持ちが湧いてくることもあります。それと同時に、参列者への気遣いが先立ち、故人とのお別れがゆっくりできなかったという後悔が生まれやすいものでもあります。

なかには、家族葬を行うことを親族に理解してもらえずに一般葬を行ったものの、周囲への気遣いに追われ、故人とのお別れがきちんと出来なかったことを悔やむ方もいらっしゃいます。

故人との最後の時間をゆっくり過ごしたいというご家族にとって、家族葬は最適な葬儀形式といえるでしょう。

終活などで故人が生前選んでいた家族葬

故人の意志を反映する理由から家族葬を行う方も増えています。

“終活”という言葉が浸透してきた昨今、「自分が亡き後のこと」を生前に整理する方も珍しくなくなりました。終活を行うことによって、自分が亡くなった後に葬儀のことで迷惑をかけたくないという思いを抱く方も多いようです。

「一般葬のように大々的に費用をかけてほしくない、でも家族には見送ってもらいたい」という故人の希望を叶えるために、家族葬が選ばれる場合があります。

家族葬を選ぶときの注意点をチェック

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家族葬を選ぶ理由を明確にしつつ、次のようなポイントをおさえておくことをおすすめします。

親族への配慮

家族葬は、喪主とその家族だけでなく、故人の兄弟などの親族を呼ぶケースも珍しくありません。「誰を呼ぶ・呼ばない」でトラブルとなる場合もあります。

ひとことで“親族”といっても、「故人と血縁は近いがほとんど交流がない親族」と「頻繁に会っていた親族」では、故人に対する思いも違うでしょう。

呼ぶべき親族について迷ったときは、故人との縁の深さを基準にする方法もありますが、判断を間違えると後々トラブルにつながる可能性もあるため、安易に決めることはおすすめできません。

葬儀は、故人との最後のお別れの場。故人のことを大切に思ってくれている人の気持ちにも配慮しながら、「どこまで呼ぶか」を慎重に判断したいところです。

また、家族葬は本当に家族だけで行い、後から改めて「お別れの会」として故人を偲ぶ場を設けるスタイルもあります。

関連記事:家族葬に呼ぶ範囲は何親等まで?一般の参列はいいの?

「直葬」との違いについて認識する

最近、家族葬とともに増えてきたのが「直葬」です。

「直葬」はお通夜や告別式の流れを省き、火葬だけを行う葬送方法で、「火葬式」といわれることもあります。祭壇を飾った式場で僧侶がお経を読むこともなく、費用が大きくおさえられる葬儀の形です。

関連記事:直葬・火葬式とは?メリット・デメリットは?

葬儀後、弔問客への対応も考えておく

家族葬に参列できなかった人が後から弔問に来ることも多々あります。

家族葬は香典を辞退するケースもありますが、後から弔問にやってくる方が、香典を持参するケースも多いようです。

そういったケースでは香典返しの品物を考えなければなりません。当日に香典返しをする「即日返し」として品物を準備しておく方法もありますが、香典の金額が多かった場合は後ほど「後返し」を手配しましょう。

まとめ

家族葬を検討する際は、なぜ家族葬を行いたいか、理由を明確にしましょう。

【具体例】家族葬を行う理由

  • 故人が生前から希望していた
  • 葬儀費用がどうしても捻出できない
  • 家族でひっそりとお別れしたい
  • 高齢だから大規模な葬儀は負担に感じる

多くの人に慕われていた故人の葬儀では、「葬儀に参列したかった…」と後から言われることもあります。理由を明確にして、家族葬を慎重に選ぶことをおすすめします。

また家族葬は、参列者への対応に追われる一般葬と比べて、遺族の負担が軽いという理由で選択するケースもあるでしょう。

ただし一般葬の場合、生前の故人を知る人から、さまざまな話を聞けるという良さもあります。

一般葬は、家族が知らなかった故人のエピソードを聞ける最後の機会とも言えます。

筆者の知人に、お父様の葬儀を一般葬で行った女性がいます。

一般葬にはたくさんの人が参列してくださり、彼女は喪主として気が張っていましたが、お父様のご友人の弔辞において心温まるエピソードを聞いた途端、涙が溢れたそうです。

お父様のご友人達が声をかけてくださり、生前の話をたくさん聞くことができて、本当に良かったと話していました。

現在は一般葬、家族葬、直葬など多様な葬儀の形がありますが、さまざまな視点から理由を明確にしつつ選ぶことをおすすめします。

 

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