こんにちは。服部葬儀社 相談員の横尾です。

時代の流れと共に宗教観や死生観が変化した現在、葬儀の形はもちろん、供養に対する考え方にも変化が現れていて、従来通りお墓に納骨をして供養する人もいれば、納骨堂や樹木葬などの供養方法を用いる人もいます。

その他に、遺骨を自然に還す「散骨」という方法で供養を行う人も増えていますが、まだまだ一般的な葬送方法とはなっていないため、興味はあっても実際に散骨を行った人の話を聞く機会は少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、散骨の種類や注意点についてご紹介します。

散骨とは ?どんな人が散骨をしているの?


散骨は遺骨をパウダー状に砕いて自然に還す葬送方法です。お墓や納骨堂に納骨した場合、故人の遺骨が納められている場所は明確ですが、散骨の場合、故人の遺骨が存在する場所が明確にわかるわけではありません。例えば、海に散骨を行った場合、散骨した場所は認識できても、海中で散り散りになった遺骨の所在を明らかにすることはできません。言い換えれば、遺骨は自然の中に還り、世界を自由に巡ることができるということです。

現在散骨は、お墓を管理する後継者がいない方や、経済的な理由や思想的な理由でお墓を持たないことを選択する方、子や孫に墓守をさせて負担をかけたくない方などが選択している供養方法です。また、全ての遺骨を散骨するのではなく、一部の遺骨を散骨し、残りの遺骨は手許供養するといった方法で供養を行うケースもあります。

散骨は個人で行うことも不可能ではありませんが、散骨に対応する葬儀社や専門業者に依頼して行うことが一般的となっています。

散骨の種類

海洋散骨

海に遺骨を撒く供養方法を「海洋散骨」と呼びます。現在行われている多くの散骨は、この海洋散骨です。

2022年8月現在、日本の法律において海への散骨は禁止されていませんが、条例を定めている地域もありますので注意が必要です。また、条例で定められていないからといって、海であればどこに撒いても問題ないかというとそうとは言えません。

海洋散骨をする場合、海水浴場や漁場などの近くで散骨することは避け、船で沖まで移動して散骨することが一般的です。散骨の際は散骨を目的とする乗客やスタッフのみが乗船する船を使用します。散骨目的ではない別の乗客がいる船から散骨することは、他の乗客に不快感を与える可能性が高い為避けましょう。

このように海洋散骨は周囲の方に不快感を与えないためにマナーを守る必要があるため、対応している葬儀社や専門業者に依頼すると安心して行うことができるでしょう。

船舶を所有している方がご自身の船を使って海洋散骨を行うことは不可能とは言えませんが、撒いて良い場所を把握できない可能性が高いため、やはり専門業者などに依頼することをおすすめします。

海洋散骨を行う業者では、貸切の船を使用する「個別散骨」と、他のご遺族と乗り合わせて散骨を行う「合同散骨」、遺族は乗船せず、代わりにスタッフが散骨を行う「代行散骨」のプランを用意している場合があるため、どのような方法で散骨を行いたいのか検討してみると良いでしょう。

山林散骨

山や林への散骨は「山林散骨」と呼ばれます。山林に散骨する場合、ご自身が所有する土地であれば散骨を行うことが可能ですが、自分以外の人が所有する私有地に散骨することは基本的にできません。土地の持ち主が許可すれば散骨することは可能ですが、海洋散骨と同様に、条例に従って散骨する必要があります。

国有地に散骨することは不可能ではありませんが、どこが国有地でどこが私有地なのか把握が難しいことや、国有地であっても散骨を規制している場所が存在することなどを考えると、自分の所有地以外の場所に山林散骨を行うことは難しいといえるでしょう。

また、自分の所有地に散骨する場合でも、穴を掘って遺骨を埋めたり、撒いた骨の上から土をかけたりすることは違法となってしまいます。

インターネット上には、寺院所有の敷地に散骨を行う山林散骨サービスが紹介されていますので、そのようなサービスを利用して山林散骨を行うことも可能です。

宇宙葬

宇宙葬は、粉骨したお骨をカプセルに納めて人工衛星で打ち上げる「大気圏散骨」、バルーンを使って成層圏に打ち上げる「バルーン散骨」、月面に遺骨を安置する「月面供養」などがあります。

「大気圏散骨」で打ち上げられた遺骨は、人工衛星とともに地球を周り、最終的には成層圏に突入して流れ星のように燃え尽きるという供養方法です。

「バルーン散骨」はバルーンを使って成層圏に遺骨を打ち上げ、成層圏でバルーンが破裂し、遺骨が散骨されるという供養方法です。この場合、遺骨は成層圏で散骨され、宇宙に到達するわけではありませんが、宇宙葬として紹介されていることが多いようです。

「月面供養」は遺骨の一部をカプセルに納め、月面着陸船で月に送るというサービスです。世界中どこからでも月を見上げてお墓参りができるというロマンチックなサービスなので、利用してみたいと思う人もいると思いますが、2022年8月現在は受付を行っていないようです。

散骨の注意点


日本では、散骨そのものについての法律が定められているわけではありませんが、良識の範囲内で散骨を行わなければトラブルになる可能性があります。法務省は散骨について、「刑法190条の遺骨遺棄罪の規定は、社会的風俗としての宗教的感情を保護するのが目的であり、葬送の目的として、相当の節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪にはあたらない」との見解を示しています。では相当の節度とはどのようなことを指すのでしょうか。ここでは散骨についての注意点をご紹介します。

遺骨はパウダー状に粉骨する

火葬場で火葬した状態の遺骨をそのまま散骨することはできないため、遺骨をパウダー状に砕く「粉骨」と呼ばれる作業を行います。粉骨を個人で行うことは難しく、専門業者に依頼することが一般的となっています。粉骨を行っている業者に問い合わせや予約を行った後、直接施設に遺骨を持ち込むという方法がある他、配送に対応している業者に依頼することも可能ですので、近隣に粉骨サービスに対応している業者がなければ、インターネットなどで探して遠方の業者に粉骨を依頼することも可能です。

遺骨を粉骨せずそのまま散骨してしまうと「遺骨の遺棄」と判断され、違法行為となってしまう可能性があるため、必ず粉骨してから散骨しましょう。

埋葬許可証を保管しておく

散骨の場合、遺骨を「埋葬」するわけではありませんが、依頼する業者によっては埋葬許可証の提示が必要となる場合があります。お墓や納骨堂に納骨しないからといって埋葬許可証を捨ててしまわないように注意しましょう。

適した場所に散骨する

生活圏やレジャーで使われる場所、漁場や養殖場といった産業に関わる場所等で散骨を行うことはマナー違反となります。

供養のために行う散骨が原因となって、トラブルに発展してしまうことは本末転倒となってしまいます。滞りなく供養を行うためにも、散骨は専門業者に依頼することを強くおすすめします。

まとめ


散骨は遺骨をパウダー状に砕いて自然に還す葬送方法で、お墓を管理する後継者がいない方や、経済的な理由や思想的な理由でお墓を持たないことを選択する方などに適した供養方法です。

散骨には海洋散骨、山林散骨、宇宙葬といった散骨方法がありますが、個人で散骨をすることはトラブルにつながる可能性を否定できないため、専門業者に依頼することが一般的となっています。

散骨を行う際には、遺骨を粉骨してパウダー状にする必要があります。粉骨せずに散骨してしまうと「遺骨の遺棄」と判断されて違法行為となってしまう可能性があるため、必ず粉骨してから散骨しましょう。