こんにちは。服部葬儀社 相談員の横尾です。
現在の日本において自宅で亡くなる人は、全体の1割強と少ない状況ですが、コロナ禍で入院患者と家族の面会が制限されている等の影響を受け、最後の時間を自宅で過ごすことを希望する人は増加傾向にあるようです。
今回は自宅での看取りや、自宅で亡くなった場合の対応について詳しくご紹介します。
目次
◆看取りとは
看取りは本来「看病」や「看護」を表す単語ですが、現在は死期が近づいている人の看病や看護を指して「看取り」ということが一般的になっています。それだけでなく、回復が望めない病状の方に対して、人工栄養や人工呼吸といった無理な延命治療を行うことはせずに、亡くなるまでの間、身の回りのサポートをしながら患者さんを見守ることを「看取り」と呼ぶこともあります。
延命治療を行わない看取りの場合でも、身体的・精神的ストレスを緩和するために、疼痛緩和ケアを行ったり、患者さんの不安を和らげるための会話をしたり、スキンシップをとったりしながら、患者さんをサポートします。その他に、水分補給や栄養補給の補助、入浴や清拭によってお体を清潔に保つためのケア、排泄に関わるケアも必要となります。
◆在宅での看取りについて
厚生労働省の資料「在宅医療・介護の推進について」によると、終末期の療養場所として自宅を希望する人は、「自宅で療養して、必要になればそれまでの医療機関に入院したい」「 自宅で療養して、必要になれば緩和ケア病棟に入院したい」を合わせると60%以上にのぼります。
この数値からもわかるように、住み慣れた自宅で家族と一緒に最後の時間を過ごすことを希望する人は多いのですが、実際に自宅で亡くなる人は全体の13%ほどとなっています。
在宅での看取りは家族にとっても精神的、身体的な負担が増えることとなる他、核家族化が進んだ現在では、介護を行える同居家族の人数が少ないことも、自宅での看取りを難しくしている要因の一つと言えるのではないでしょうか。
在宅での看取りを行う場合、家族とケアマネージャー、医師、看護師、ホームヘルパー等が連携を取りながら介護を行う他、患者さんの体調によっては、車椅子、介護ベッド、シャワーチェアー、ポータブルトイレなどの介護用品が必要となります。
◆自宅で亡くなった場合の連絡先
前述した通り、現在の日本では自宅で亡くなる人は13%ほどですので、自宅で家族を看取った経験がある方は少ないことが推察されます。ここでは自宅で亡くなった場合の連絡先と、注意が必要となる点についてご説明します。
かかりつけ医がいる場合
病気で自宅療養中であれば、訪問診療などを利用している方が多いと思いますので、かかりつけ医に連絡を入れます。死亡時刻から遡って24時間以内にかかりつけ医が診察をしていて、死因が持病であることが判断できる場合は、死亡診断を行わずに死亡診断書が発行されます。最後の診察から24時間以上が経過してから死亡した場合は、改めて死亡診断を行ってから死亡診断書が発行されます。
死亡診断書は、人が死亡したことを医学的・法律的に証明する書類で、死亡した人が死亡するまでの経緯を可能な限り詳細に表すものです。死亡診断書が無ければ火葬や埋葬を行うことができませんので、葬儀社に連絡するよりも先に、死亡診断書を発行してもらう必要があります。
かかりつけ医がいない場合
かかりつけ医がいなければ警察に連絡します。その後、警察官や検視官が自宅に来て検視を行い、事件性がないと判断され死因が特定された場合は死体検案書(死亡診断書と同様の書式のもの)が発行されます。事件性があると判断されたり死因が特定できなかったりする場合は、行政解剖または司法解剖を行うことになります。
◆自宅で亡くなった場合の注意点
自宅で家族が亡くなるという経験をする人は少ないため、どんなことに注意すれば良いかわからない方が多いのではないでしょうか。注意点を知っておくことで、負担を減らすことができると思いますので、確認しておくことをおすすめします。
救急車を呼ぶケースと警察を呼ぶケースを知っておく
自宅で家族が亡くなった場合、特に急死であればまずは救急車を呼ぼうと思う人もいると思いますが、明らかに死亡していて蘇生する可能性が無いようであれば、救急車ではなく警察を呼んだ方が良いでしょう。蘇生の可能性がある場合、救急車を呼べば救急隊員が対応してくれることもありますが、蘇生の可能性が無ければ病院に搬送されることはなく、救急隊員が警察に連絡を入れることになります。
ご遺体を動かさない
自宅でご家族が亡くなると、多くの場合、医師や警察が自宅を訪れて死亡を確認することになりますが、死亡確認が終わるまでは、ご遺体に触れたりご遺体を動かしたりすることは避けましょう。お風呂やトイレで亡くなっている場合も、ご遺体を移動したり服を着せたりせず、医師や警察の到着を待ちましょう。ご遺体を触ったり、動かしたりすることであらぬ疑いをかけられないよう、ご遺体は亡くなった時の状態を保つことが大切です。
◆自宅で亡くなった後の流れ
ご家族がご自宅で亡くなった場合の、逝去からお通夜までの流れをご紹介します。
1.自宅にてご逝去
2.状況に応じて適切な連絡先に連絡する
かかりつけ医がいる場合 → かかりつけ医に連絡を入れる
かかりつけ医がいない場合 → 警察に連絡を入れる
3.医師または警察が発行する死亡診断書もしくは死体検案書を受け取る
4.遺体を安置する
ご自宅に安置スペースがあればそのまま安置し、自宅安置が難しい場合は葬儀社に連絡して、葬儀会場などの安置場所に移動します。ご自宅に安置スペースがある場合でも、ご近所の方への配慮から、自宅ではなく葬儀場や安置所に安置するケースもあります。葬儀場や安置所での安置を希望する場合は、葬儀の事前相談を行い、希望する葬儀場での安置や遺族の付き添いの可否、追加費用などについて確認しておくことをおすすめします。
5.菩提寺や親族に連絡する
菩提寺(ぼだいじ:お付き合いのあるお寺)や訃報を早く知らせたい親族に連絡します。僧侶の予定をお聞きして葬儀日程を検討します。菩提寺は無いけれどお経はあげてほしいという場合は、葬儀社に寺院の紹介を依頼したり、ネット僧侶を手配したりする方法があります。
6.葬儀の打ち合わせを行う
葬儀を依頼する葬儀社のスタッフと打ち合わせを行います。打ち合わせでは、日程、会場、プラン、遺影、祭壇、棺、仏衣、香典返し、通夜振る舞い、宿泊人数など、多くの事柄について選定することになります。打ち合わせ後は見積書を提出してもらい、内容をしっかり確認してから依頼するようにしましょう。
葬儀の日時が確定した後、親戚や知人に訃報を伝えます。逝去後早い段階で訃報連絡をした方にも、必要であれば改めて葬儀の日時を伝えましょう。連絡を入れた人は葬儀に参列する可能性が高く、参列できない場合でも香典や供花を送りたいと考える方が多いので、葬儀の参列人数や香典・供花の受け取りについて検討しておくと良いでしょう。
7.死亡届を記入し自治体の窓口に提出する
死亡診断書・死体検案書の左側半分は死亡届となっていて、ここに必要事項を記入して故人の死亡地又は本籍地、もしくは届出人の所在地の市役所、区役所、町村役場のいずれかに提出します。
死亡届の提出を代行している葬儀社もありますので、その場合は葬儀打ち合わせの際に死亡届を記入すると良いでしょう。法律では、死亡の事実を知ってから7日以内に死亡届けを提出しなければならないとされています。一般的には葬儀の日程が決まり次第提出すると同時に、火葬・埋葬許可申請を行い、ご遺体を火葬する際に必要となる火葬許可証を受け取ります。
亡くなる時間帯にもよりますが、一般的にはこの翌日か翌々日にお通夜を行う流れとなります。
◆まとめ
看取りはもともと「看病」や「看護」を表す単語でしたが、現在は死期が近づいている人の看病や看護を「看取り」と言うケースが多くなっています。回復が望めない病状の方に対して無理な延命治療を行わず、身の回りのサポートをしながら患者さんを見守ることを「看取り」と呼ぶこともあります。
自宅でご家族が亡くなった場合、かかりつけ医がいればその医師に連絡し、いない場合は警察に連絡を入れます。医師や警察官、検視官が死亡を確認した後、死亡診断書・死体検案書が発行されますが、死因が特定できなかったり事件性があると判断されたりした場合は、行政解剖または司法解剖を行うことになります。
自宅で家族が亡くなった場合、蘇生する可能性が無いようであれば、救急車ではなく警察を呼びましょう。また、医師や警察による死亡確認が終わるまでは、ご遺体に触れたりご遺体を動かしたりすることは避けましょう。