納棺とは、亡くなった方を“棺に納める”ことですが、棺という箱に入れるという単純なものではなく、葬儀においてとても大切な意味があります。

人が亡くなったとき納棺は必ず行うとはいえ、その深い内容までは分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

故人をしっかりと送り出すために、その意味や参列者が誰なのか、棺に入れたいもの、納棺を行うタイミングなどを知っておきたいものですよね。

今回は、「納棺」について詳しくお伝えしていきます。

 

お通夜の前に行う“納棺”とは?

黒板に描かれたクエスチョンマークの画像

まずは、納棺とは何なのかについて見ていきましょう。

納棺が持つ大切な意味について

納棺は、故人の旅立ちの準備として大切な儀式です。

棺には小窓があって、ご遺体が棺に入った後は「お顔だけ」は見ることができます。ただ、棺にご遺体をおさめた後は、故人の体には触れられず、全身を見ることができません。

つまり、納棺は「故人に触れることができる最後のタイミング」といえるでしょう。

「これまでありがとう」という言葉をかけたり、これから旅立つ故人に「安らかに…」という気持ちで触れながら納棺を行いたいものですね。

納棺の参列者は誰?

納棺の儀式の参列者は、親や子供、孫など近しい親族中心と考えておきましょう。

納棺の儀式の参列者が身内を中心としている理由は、棺に入れる前に「体を拭く」「服を着せる」などのシーンがあるからです。

親族の立場で考えると「家族以外には立ち会って欲しくない」という思いもあるのではないでしょうか。これはとても自然な気持ちですよね。

親族の方から、親交の深い故人の友人に「参列して欲しい」と申し出るケースもあるかもしれませんが、友人、知人は遠慮するのが一般的です。

通夜や葬儀は、家族以外の人が参列するため、どうしても気を遣って故人に向き合う時間が少なくなります。

参列者が親しい家族のみの納棺の儀式は、周りに気を遣わずに、故人に触れながらさまざまな想いで感謝やお別れの気持ちを伝えられる場ともいえます。

納棺はいつ行うの?

納棺のタイミングに正しい決まりはありません。ただ、通夜のときには納棺が済んでいることから、多くの場合、“通夜が始まる前まで”に余裕をもって行われています。

納棺は葬儀の一連の流れにおいてやるべきものであるにも関わらず、内容については詳しく分からない人も多いでしょう。

でも、ご安心ください。ご遺族様がすべてを把握して執り行うものではなく、通常は葬儀社のスタッフが開始時間や段取りを進めてくれます。

ご不安な点は、私どもスタッフにお気軽にお問い合わせください。

納棺の儀式はどのくらいの時間?

どんな内容の納棺をするかによって必要となる時間が異なります。短ければ30分程度で終わることもあるものの、だいたい1時間ほどが一般的です。

 

納棺に参列するときのマナーとは

棺に向かって手を合わせる遺族の画像

次は、納棺の参列者となったときのマナーについて見ていきましょう。

参列者の服装について

基本的に身内が中心の儀式ということもあり、ご自宅での納棺なら参列者は礼服でなくても大丈夫です。

ただし、「模様入りや派手な色味の洋服」「カジュアルな洋服」「ミニスカートや極端に短い半袖といった肌の露出が多い洋服」などは避けるべきでしょう。無地のダークカラーの洋服で参列することをおすすめします。

また、葬儀場などの施設で行う納棺の場合は、参列者は喪服を着ることが多いです。

どちらにしても、「故人との大切な儀式」と考え、参列者は場にふさわしい服を着用することが大事です。

棺に入れても大丈夫なものとは?

故人が旅立ちで困らないように、棺にはさまざまな物を入れます。

これを「副葬品」といいますが、通常は故人が生前愛用していたものを入れるのが一般的です。何を入れるかはご遺族様の判断になります。故人の生前の様子を思い浮かべながら選んでみましょう。

あの世に旅立つときはたった一人の故人。でも、きっとご家族様の思いと共に棺に入れてくれたものを手に取り、安心して旅立ってくれることでしょう。

ただ、この副葬品については何でもかんでも入れていいわけではありません。

棺に入れたものは“火葬される”ことになるため、燃えるものしか入れられません。

副葬品として選ばれることが多いものの一例は以下の通りです。

  • 故人が好きだった洋服
  • 愛用していたハンカチ
  • 生前よく飾っていた花
  • 故人が写っている写真
  • 愛用していたタバコ
  • 故人が身に着けていたお守り

上記の他には、故人に向けた手紙がおすすめです。紙は燃えるものですから、安心して入れられます。

お別れは突然のことで感謝の気持ちを伝えられなかったと悔やんでいる方も多いでしょう。亡くなった方が旅の途中で読んでくれることを願いつつ、溢れる想いを書き記してみてはいかがでしょうか。紙に書きだすことで、気持ちが少し整理できることもあるかもしれません。

副葬品にできないものは“燃えないもの”です。

アクセサリーやメガネ、プラスチック、革、ガラス、ビニール、ライターなどは、「燃えない」「爆発のリスク」「燃やすことで有害物質が出る」「骨に成分が付着して汚してしまう」などの問題もあります。

また、故人だけが写っている写真を棺に入れる分には問題ないですが、生きている人の写真は入れてはだめという言い伝えもあります。その理由は「存命の人を道連れにしてしまうから」というものです。

迷信とはいえ、気にする方も多いでしょう。

故人と誰かが一緒に写っている写真を入れたことがその本人に伝わると気分を害されてしまうかもしれません。写真を入れる際は、故人が1人だけで写っているものや、すでに亡くなっている方と一緒に写っているものを選ぶのが無難です。

 

納棺までの流れについて

湯灌の準備をする女性スタッフの画像

地域などによって異なる部分はありますが、一般的な納棺の流れについて以下にまとめました。

湯灌(ゆかん)

湯灌とは、故人が清らかな体で旅立てるように、身体を綺麗にすることです。

昔は、ご遺族が本当にご遺体を“入浴”させて、丁寧に洗っていた時代もありました。

ただ、大がかりな湯灌の作業は、時代とともに簡略化。現在の湯灌といえば、体を拭く程度のことも多くなりました。

女性には死化粧を、男性には髭剃りをして身なりを整えます。

死装束を着せる

ご遺体を清らかにした後は、白い衣装「死装束」を着てもらいます。

死装束とは、故人がこれから迎える“来世”への旅立ちの際、無事に乗り越えていけるように身に着ける「火葬前に最後に着る衣装」です。“白”という色なのは、「汚れのない清らかな状態であの世に向かってもらいたい」という思いが込められているとの説もあります。

ただし、死装束は宗派によって考えが異なるほか、最近は昔からの風習を必ず守らなければならない…という考えはなくなり、普通の洋服を着せるケースも増えてきました。

生前着ていた洋服を着せたいというご要望があれば、葬儀社に相談してみましょう。

棺にご遺体をおさめる「納棺」

湯灌で身を清め、死装束などの旅立ちの衣装を着せて、すべての旅支度が整ったら納棺です。

前述したように、生前使っていたものなどを一緒に入れます。入れてはいけない物もあるため、勝手な判断で入れずに不安なところは葬儀スタッフに聞いておくと安心です。

ご遺体の周りに副葬品をいれ準備が整えば、棺を閉じます。

 

まとめ

故人の体を綺麗に整えて棺に入れる“納棺”は、火葬前に故人に触れあえる最後の機会です。故人があの世に旅立つための準備で身体を綺麗にしたり服を着せたりするため、基本的に参列者は故人の身内が中心となっています。

目を閉じて横たわっている故人を見ていると、生前の様子が思い浮かんでくることでしょう。

納棺の儀式の内容は宗派や地域によって異なる部分も多々ありますが、「故人と共に最後に過ごせる家族だけの時間」ともいえます。直接的に故人に触れ合い声をかけながら、お別れの準備を整えていきたいものですね。

納棺の段取りは私ども葬儀社のスタッフが丁寧にサポートいたします。ご不安な点は遠慮なくご相談ください。

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